褥瘡の完治から感じる人間の回復力

看護小規模多機能やしろの郷から利用者さんの症例の報告です。

昨年9月に地域のケアマネさんから「褥瘡がひどく、現在のサービスではケアできない状況です。」と相談があり、急いでその方の在宅へ伺いました。ご家族と同居されていますが、みなさんお仕事をされており、忙しく、ご家族に介護をお願いすることは難しい状況でした。

急いで契約をして、当事業所への利用開始となりました。

今まで週2回の通所介護と毎日ヘルパーさんの朝夕の介入でしたが、当事業所では毎日通いと週1回のお泊りの計画を立てました。

利用当初は車椅子への座位保持が難しく、ベッドへのお休みをすぐに希望される方でした。

理由としては、仙骨部の褥瘡がステージⅣ(ポケットがあり、深い)の為、痛みがあり、痛みの軽減の為横になりたい。という状況です。

そのため大声で「すいませーん。おねがいしまーす」と訴えのある方でした。

当事業所として、まずは「栄養状態をよくする」「なるべく車椅子の時間を増やす」事を重点課題としました。

「栄養状態について」は、訪問診療の先生に相談し口腔からの栄養剤を処方し、かつ、昼食の食事形態を注意深く観察しました。

最初はムース食、おかゆでしたが、飲み込み状態等評価し、常食形態へ移行しました。その際食事介助で飲み込みを注意深く観察し、約2カ月で見守りのみの食事までに回復することができました。

「車椅子の時間を増やす事について」は、福祉用具の方と協同して、負担のかからないポディショニングを模索しました。様々な形態のクッションを使用してなんとか1時間車椅子の時間を作ることができました。

毎日の褥瘡の清掃と処置、栄養状態の確認、車椅子の座位時間、こちらの3点を重点的にケアを提供しました。

様子が変わったのが利用開始してから2カ月たったある日、職員さんから「そういえば、最近訴えの声すくなくなってきたよね」とぽつり

その頃になると褥瘡のポケットが小さくなっていき、回復している状況は目覚ましく、職員さんの間でも「この関り方でよかったんだ」と少し安心しました。

やしろの郷に利用時に契約していた訪問診療の先生からも褥瘡の状態が軽減したこと、肌艶がよくなってきたことにお褒めの言葉を頂き、ますます自信がついてきました。

新しい年を迎え、桜が咲き始めた頃には、自分で車椅子を自走して、寝たい時にはベッド近くまで行って「寝かせてください!」を話をするようになりました。

やしろの郷のご利用時には排便コントロールが難しく、摘便処置をしていましたが、今は自分で排便ができるようになりました。

当初は食事介助をしており、食事が終わっても嘔吐を繰り返していましたが、今は常食でご自身で食事を召し上がっています。

何より、職員さんに冗談を言い、場を和ませてくれる姿はベッドから大声を出して助けを呼んでいる昨年の姿からは想像ができませんでした。

わたくしもこの介護業界に努めて15年たちますが、改めて人間の回復力の強さに驚愕します。

 

答えのない介護ケアですが、その方の生活環境を整え、支援することで、「生きようとする力」は発揮されるのではないかと思います。

その方が少しでも「快」となる空間、時間を作り上げていくことが我々の使命ではないかと、実感しています。

 

褥瘡の経過写真です。

インパクトのある写真ですので、白黒にて掲載いたします。

写真の通り、当事業所が介入してから一気に改善されていきました。