「地域で暮らす」という事の話

やしろの郷は「看護小規模多機能型居宅介護」の事業形態ですが、この「看護小規模多機能型居宅介護」は「小規模多機能型居宅介護」と「訪問看護」のサービスを合わせた「複合型サービス」となります。

訪問看護は読んで字のごとくなのですが、看護師さんが利用者さんの自宅に「訪問」し「看護」的な処置を行う。というサービスです。

小規模多機能型居宅介護とは?ですが、下記にわかりやすい文言を引用いたします。

小規模多機能型居宅介護とは、中重度の要介護者となっても、在宅での生活が継続できるように支援する、小規模な居住系サービスの施設です。デイサービスを中心に訪問介護やショートステイを組み合わせ、在宅での生活の支援や、機能訓練を行うサービスです。

2006年4月の介護保険制度改正により、今後増加が見込まれる認知症高齢者や中重度者ができる限り住み慣れた地域での生活が継続できるように、新たなサービス体系として地域密着型サービスが創設されました

公益財団法人長寿科学振興財団より引用 https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/chiiki-service/shoukibo.html

やしろの郷は定員25名の登録者の方に訪問、通い、宿泊、訪問看護を組み合わせてその人が望む暮らしを支援しています。

今回ご紹介する方は一人暮らしの男性の方です。在宅酸素が必要な方で、認知症の症状も出現していますが、ご自身で「一人暮らしがしたい」と意思がしっかりしている方です。

この方の行動の優先順位は「コンビニエンスストアで買い物をする」でした。当事業所が関りを持った時はご自身で買い物をして徒歩1分の自宅へ帰ることができたのですが、退院後、認知機能が低下してしまい、時間の把握が難しい、短期の記憶が残らない状態でした。

「コンビニへ行く」という行動はできるのですが、家に帰る道を忘れ、地域の方に保護してもらい、こちらがお迎えに行くこともありました。

やしろの郷の関わりとしては、行動障害が悪化する前は毎日の訪問と週2回の通いのサービスを計画していましたが、悪化後は毎日通いと週2回のお泊りに変更しました。

元々、不安感が強く、安心するまで方々に電話をして確認をされる方でした。

今まで周りに支えられて生きてこられた方でしたので、今後も周辺の方に助けを求めると予測し、隣人の方、コンビニの店員さんに利用者さんについての話、困ったことがあったらやしろの郷に連絡を欲しいと伝えました。

予想通り(!?)夜間隣人の方へチャイムを鳴らして助けを求めたり、やしろの郷へ電話をして「テレビが映らない」「聞こえない」等々不安感の訴えが続きました。

やしろの郷に来ても「家に帰る」と言い、午後イチに自宅へ送り、夕方ごろに提携している(笑)コンビニ定員さんから「やしろの郷に行きたいと言っています」と連絡があることもしばしば。

通いのお迎え時に隣人の方から「昨日の深夜にピンポンがなったわ。TVが映らんかったでつけといたよ」と報告。

「深夜は勘弁してほしい」と。「けどできることはするよ」とおっしゃっていただき、そんな気持ちに我々はただただ頭があがりません。

地域包括ケアシステム内に「自助・互助」の概念のより強い必要性がある。と明文化されています。

文言では簡単なことですが、実際に肌で「地域で生きていく為に支えあう」ということは少なからず「地域の方のご負担が増える」という事ではないかと実感しています。

今回の症例について、「通い・訪問・宿泊」がセットになったサービスだから体験できたものではないかと思います。

別々のサービスでしたら、ここまで深くかかわれていなかったのではないかと実感しています。

看護小規模多機能というイメージですと、「看取りの方」「医療依存度が高い」方のイメージがありますが、上記のように認知症の方で一人暮らしの方の対応も可能です。